スポーツ中継というと実況・解説抜きには語れない。そしてその実況や解説が優勝という偉業をより感動的にするのだ。
記憶に新しいところは、2年前の2004年8月16日。日本時間午前5時39分。
体操男子団体総合の決勝で、日本が28年ぶりの金メダルを決めるその瞬間、鉄棒で最後の演技者、冨田洋之選手がまだ空中を舞っていて、これから着地しようとするその瞬間だった。
「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」
この直後、冨田選手は見事な着地を決め日本を金メダルに導いた。
この後からNHK視聴者センターの電話が鳴り続けた。
「今の実況はすばらしかった。」
ある新聞は「実況も金メダル」との見出しで絶賛した。
1936年ベルリン五輪の河西三省アナウンサーの「前畑ガンバレ」とともに日本のスポーツ中継史上に永遠に残るであろうこの名実況を残したアナウンサーはNHKの刈屋富士雄アナウンサーだ。
そして、今回の荒川選手の演技を実況したのも刈屋アナだったのである。
何でもNHK杯国際フィギュアスケートで荒川静香が初優勝をしたときもやはり刈屋アナだったらしい。
今日も刈屋アナはすばらしい実況を残してくれた。
ここで2ちゃんねるのNHK実況板に書き込まれた刈屋アナと解説の佐藤さんのやりとりを引用してみる。
刈屋アナ:ショートプログラムで3位、パーソナルベストで3位、
フリー 大好きな曲で最高の舞台で演じる幸せを感じながら
世界の頂点にたった想い出のそしてとっておきの曲です
トゥーランドット
(演技開始)
最初にトリプルルッツからダブルルッツ
解説佐藤:トリプルルッツから、ダブルループ
刈屋アナ:そしてこの後です。3回転3回転、んっ、3回転、2回転にしました
解説佐藤:三回転サルコーダブルトゥループ
トリプルフィリップ(ワァアアーー 歓声 拍手)
カラダがよくうごいていますねー
刈屋アナ:うごいてますね
表情にも余裕があります
(V字開脚 歓声拍手 両手ビールマン)
さー ここからの2分15秒あまり 荒川静香 長野からの8年の想い
(優雅な動き会場がうっとり)
解説佐藤:ダブルアクセル(歓声拍手)
(回転するが解説を忘れる)
(歓声)
解説佐藤:ダブルループ
(スピン イナ・バウアー 歓声拍手 連続スピン 歓声 会場騒然
ビールマンスピン)
(刈屋アナ、解説佐藤とも 音声なし 演技に夢中になっているのか)
解説佐藤:ホントにエッジによくのってカーブにのって ショートプログラムの時
の倍ぐらい いい動きのスケートですね(歓声)
歓声がしだいに高くなり さいごの スピン連続をくりかえす
解説者 無言 ことばがでてこないのか
しだいに大きくうねるような歓声拍手 スタンディングオベーションはじまる 凄い
歓声 フィナーレ そして 最高得点表示 歓声
刈屋アナ:カラベーラ(会場名)初めてのスタンディングオベレーション
どうだろう、後半二人とも演技に見入ってしまい言葉が出てこないのだが、これはこれですばらしい実況・解説だと思わないか。
最近の民放の何でもかんでも「絶叫実況」や、自分が知っていることはとにかく全部しゃべりきらないと気が済まないと言う感じで実況しているのが当たり前とする中で、会場の様子、荒川選手の演技を過不足無く見事に伝えていると思う。民放のアナウンサーで元プロレス中継で実況を担当していて、フリーになってからなぜかキャスターのふりして報道番組をしているようなタイプのアナウンサーでは伝わってこない会場の様子だと思う。
そして最後にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
「オリンピックの女神は荒川静香にキスをしました!」
ちなみにこの二人、後でこんな事も言っていた。
刈屋アナ:「五輪を楽しみたい」と口にする選手がいるんですけれども、"最高に仕上げてきた人"が初めて楽しめるんですね
解説佐藤:そう思います。楽しむというのは、あはは、って楽しむのではなく、今まで作り上げてきたその状態をこの場で出すことができるからそこで初めて自分が自分で感激をするということ。そして楽しむということ
刈屋アナ:安藤選手は自分の同年代の選手が2倍3倍の練習をこなしてるのを見て大きな刺激になったと思います。これが変わるきっかけになると思います。
解説佐藤:そうですね。でもそれを計画し実行することがまず大事です。まずそこから始めて欲しいと思います。
NHKという公共放送の場でよくぞ言ってくれました。>お二人
少し前に、盛り上がれない(盛り上がらない)オリンピックと書いた時に、遊びの延長にしか見えないということを書いたが、それが明らかに今回の日本選手の結果に表れているように思えて仕方ない。
「楽しんできます。」「楽しめたのでよかったです」そんな事は結果が出てから言え。
アテネの時の高橋尚子だって、柔道のたわらちゃんだって結果が出たから「楽しかった」と言えたのだと思う。
始まる前までノーマークで、入賞したとたんにアイドル扱いをされるようになった19歳の選手も、帰国後のインタビューで「緊張とかしなかったですか?」の問いに「普段の遊びと同じなんで」みたいな事を言ってたが、この選手はこう言うと失礼だがみんなが期待していた以上の成績を残したからまだ許される。
しかしもっともっと上位の記録を期待されていながら、その事に天狗になってか知らないが、期待通りの結果が残せなかった名字の異なる兄妹選手、体重不足で失格になってしまった選手、15位に終わってしまい、その後のインタビューで、思った通り骨折の完治の話とか、ずっと日本に帰りたかったとか言ってた選手とかに「楽しかった」とか笑顔で言って欲しくないのである。
オリンピックはオリンピックなのである。他の世界大会とは違うのだ。国民の期待度も世界の注目度も、全然違うのだ。まさに国を背負っている。そういう物なのだ。だからこそ、今朝の表彰台で荒川選手が君が代をきちんと歌っているのを見て感動したのである。
スケートのことは知らないけども、ただ見ているだけでも荒川選手はすごかった、美しかった。
そうそう、昔高校の先生が「オリンピックの体操やフィギュアスケートの採点は、演技以外にも、選手そのもののルックスも採点に入っている。だから日本人(アジア人)はメダルが獲れないんだ。」と話していたことがある。これを聞いたときに、確かにそうだなぁと当時は思っていた。メアリー・ルー・レットンだったっけ?アメリカの体操選手、かわいかったよなぁ。しかし、今回の金メダルには納得だ。
でもその美しさは、みんなが見ていないところでも血のにじむような努力を繰り返してきたからに違いないだろう。
そして、それを表に見せないからこそ美しく光り輝くのだと思う。
スルツカヤ選手だって、原因不明の難病と戦っている。突然の高熱、手足のむくみ。血管の難病だそうで、今でも薬が欠かせない。副作用のめまいにも苦しんでいて、医者からはやめるようにも言われたらしいが、「病気になってスケートが大好きなのがわかった。観衆に見つめられる緊張感が最高だから」と滑っている。「成績が悪いのを病気のせいにしたくない」と。だからこそ彼女は誰からも女王と呼ばれるのだろう。
花形満だって、表向きには何でもかんでもこなしてしまうすごいやつだったが、彼は彼で人に隠れて打倒飛雄馬を目標に人以上の努力を常にして、決してそれを人に見せないやつだったのである。だからこそ彼はいつもグラウンドで輝いていたのだと言うことをもっともっと知るべきである。(それはそれで彼の意志に反するのだが)
そう思うと、少年漫画と言えども、巨人の星は現代日本人が忘れかけている根性だとか努力だとか大事な物を教えてくれる。「今時はやらないよ」とか言うやつも多いが、日本人として、人間としてとても大事なことだと思うのだ。
今回全く成績がふるわなかったのにヘラヘラしていた選手(ヘラヘラしていたから成績がふるわなかった選手も)達は、一度巨人の星を一巻から最後まで読み直して、スポーツの真剣勝負、根性、努力とは何かということを胸に刻みつけて欲しいと思う。
何だ、最後は漫画の話かよ。
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